『完全犯罪研究部』、おかげさまで売れております。

この辺で一発、未読の方にちょっとだけ内容をお教えしましょう。





「――んん……っ」


女教師・由利千早が目を覚ましたのは、薄暗い倉庫の中だった。
成長期の男子生徒の体臭が何年も熟成されたものが鼻につく。


「おはよう、由利先生。いい格好じゃないか」


「……杉野さん?」


身体を動かそうとして気づく。
後ろ手に縛られているようだ。
横にされているのは、体育のマット。


「今度は何なのよ……?」


「何、いろいろとお礼をしたいと思ってね。
ボクはされたことは必ずやり返す主義なんだ」


にっこりと頭上から笑む、杉野二号の悪魔のように美しいこと。
男言葉を使っているのは彼女の“キャラ”だが、右目にした眼帯は確かに私の行動の結果だ。
左側だけ長い黒髪をお団子に編み、右半分はばっさりと刈り上げた奇妙な髪型も。


杉野二号は手を広げ、芝居がかった調子で謳い上げる。


「さあ、先生は何がお好きかな?」


「何をしてくれるの?」


「とりあえず鞭と蝋燭、三角木馬、<censored>、<censored>、<censored>を用意したけどどれがいい?」
(※サーバーの規約により、様々自主規制しております)


「どうして学校の倉庫に三角木馬なんてあるのよ……」


「お約束としてはこれかな」


杉野二号は革製の黒い鞭を取り上げる。
……一体誰が高校生にこんなものを売ったのだろう。
鞭の柄を私のあごに当て、上を向かせる。


「さあどんな悲鳴を上げてくれるのかな、雌豚先生」


「それはこっちの台詞ね」


言って私は一思いに拘束を解き、立ち上がる。
見下ろしてやると、杉野二号の目に動揺が走った。


「ど、どうして」


「“こんなこともあろうかと”――いい加減学習するわよ、私だって」


白衣の袖口に隠したミニカッターが役に立った。
この子たちに付き合うにはこういうものが必要だと思い知ったばかりだ。


杉野二号があんまりぼーっとしているので、その手から鞭を取り上げる。
アドリブに弱いのだ、この子は。
革の鞭を伸ばし、引っ張ってみる。


「子供の玩具かと思ったら、やっぱり本物なのね」


右手で持って軽く振ると、思ったよりいい音がした。
杉野二号のほおに赤い線が走っていた。


――形勢逆転、と言うのか。
うつむいたままの彼女の顔に指をかけ、今度は私が上を向かせる。


「貴方、確か処女よね? 私に何をしてくれるつもりだったの?」


「由利先生……」


「いろいろと集めたようだけどやっぱり道具は道具よ。
大人の女になるのにそんなものは必要ないわ。
たっぷり教えてあげる」


私は彼女の白い頬に走った赤い線に唇を寄せ――

                                         (省略されました。続きを読むにはここをクリックしてください


(※この日記は2010年4月1日に作成されたものです)