どうにも悲しい話が多いです。

どうも、性懲りもなく出てきました。
非実在青少年・立花美樹です。
最近、あまり主張の場がないというのもあります。
――ぼく、嫌われてるんでしょうか。


まずはこちら。


9月の3次トキ放鳥計画 環境省「予定通り目指したい」

 新潟県佐渡市佐渡トキ保護センターの放鳥訓練施設「順化ケージ」で、国の特別天然記念物トキ9羽がテンに襲われて死んだ問題で、白紙に戻る恐れがあった9月の3次放鳥計画について、環境省の塚本瑞天(ずいてん)・野生生物課長は16日、「外敵対策などを急いだうえで、予定通り秋の放鳥を目指したい」と述べた。


 3次放鳥は当初21羽の計画だったが、今回の事態を受けて10羽にする予定。ケージではこれまでに、テンの侵入経路になり得るすき間が260カ所以上見つかっている。同省は3次放鳥実現を目指し、すべてのすき間を埋める工事を進めるほか、ケージ内にも電気さくやわなを設置して外敵の侵入対策をとる。


 一方、同省は16日に佐渡市で開いたトキ飼育繁殖専門家会合で、ケージ南側の天井部と側面の境界のすき間(幅16センチ、高さ5センチ)に張った両面テープからテンの毛が見つかったことを報告した。


 毛の付着は16日朝確認されたことから、同省はテンが15日夜以降に侵入したとみている。テープは侵入場所を調べるため30カ所のすき間に張られていた。同省はトキが襲われた9〜10日も含め、テンが日常的に出入りしていた可能性があるとみている。ケージの建設当初、天敵の侵入防止対策が検討されていたかは不明で、同省は検討チームをつくって再発防止策を探る。


……鳥を10羽やそこら放鳥して何になるんですか?
トキの絶滅はもはや取り返しのつかない「現実」です。
センターで「保護しているふり」をするのはまあ、政治的な問題でしょう。
テンの侵入を許すセンターの設備が杜撰だとかそういうのはこの際置いておくとして。


かごの中でテンに殺されるか、かごの外で猛禽に殺されるか、それだけの違いじゃないんですか?
それだけじゃ済まない可能性もあります。
送電線や一般人のお宅などに営巣されたら問題になりますし、この10羽のトキのために生態系が乱れる可能性も大いにあります。
何よりこのトキは「ニッポニア・ニッポン」と呼べるものではありません。
中国産です。
日本海を隔てただけで、遺伝子のパターンが随分違う。
「日本のトキ」はもう何をどうやっても復活することはできないんです。
クローン技術が進んだってそれは変えられません。
クローンでは「生物多様性」を取り戻すことはできませんから。


20羽しかいないなら、動物園などしかるべき施設で見世物にした方がましです。
自分たちが何をしでかしたのか子供に見せつけてやればいいでしょう。
同じことを繰り返さないためにも。
本当の科学者なら自分の研究を見せる場を設けるのは大切ですよ。
アピールしなきゃあすぐ仕分けられちゃいますからね、今どき。


「飼っている鳥や魚を自然に放って自由にしてやること」が善行だとされているのは、仏教的思想です。
“放生”と言います。宗教です。
日本人の大半が無宗教だと思ったら大間違いです。
日本人が飼いきれないペットを捨てるのに抵抗がないのはこのためです。
その思想の下に放たれたウシガエルミドリガメカダヤシやヒメダカが何をしでかしたかを思えば、この中国産トキが何をしてくれるか、悲観せざるを得ません。


かごの中の小鳥が憐れに見えるのはかごが狭いからです。
人間に飼われているから不幸なわけではありません。
逃げ出したカナリヤやインコが亜熱帯化する東京の空を舞い、在来種のスズメが激減する。
それが「善行」ですか?
徹底的に愛玩用に品種改良されたチワワが、野良犬になって生きていけますか?
今どきのペットはその辺で捕らえた野鳥をかごに入れて飽きたら放す、というものじゃないんですよ。


動物園の動物が不幸に見えるとすればそれは動物園の責任です。
しかし言っておきますが、動物園という場所は「動物好きの人たちがボランティアで運営している施設」ではありません。
これ、意外と勘違いしている方が多いですよ。
動物園の前に珍獣を捨てる人、たくさんいますからね。
貴方が思っているほど「珍」じゃないから動物園も困ります。
まあ、これはいくら何でも極端ですけどね。
ビジネスとしてコストパフォーマンスを計算しつつも、最低限の誇りをもって職務を果たす。
他の職業と同じです。


水族館もそうですが、見応えのある動物園はそれなりの入場料を取ります。
ボーダーラインは千円前後です。
ぼくは「無料」や「入場料200円」の動物園には行きたくありません。
見るに耐えない場所であることを知っているからです。
千円以下の動物園がひどくても文句を言ってはいけませんよ。
それは作った人が悪いし、経営方針も悪いし、お金を出し渋った貴方も悪いんです。


逆に日本には「入場料を取るペットショップ」があります。
横浜のインナー・シティー・ズー「ノア」。
エキゾチックアニマルと呼ばれる、少々マイナーな小動物を取り扱っているようです。
動物を飼うというのはそういうことです。
考えてみれば東京タワー水族館に通じるシステムですね。


トキがこの日本で生きていくには中途半端に野生に戻って農家の畑に乗り込んで悲しいニュースを作るより、ネットで仕切られた中で「朱鷺色の翼」を広げるべきでしょう。
鳥小屋は昔ほど狭くないし観光ポイントにもなって、それで皆が幸せになれます。
トキが帰れる自然なんかないし、そもそも帰る場所は日本ではないのだから。


もう1つ。世間ではどうも、出版の規制がどうとかいう話題が出ているらしいですね。
非実在青少年で選挙権のないぼくには何を言う資格もありませんが、恐らく世間が思っているよりも、日本人は下衆な民族です。


不景気不景気と言いながら、絶滅危惧動物をペットショップに並べるために金に飽かして密輸しまくっているのはほとんどが日本人です。
それを買っているのは「オタク」です。


――チョビ、ヘドウィグ、ニモ、くぅ〜ちゃん
資本主義の名の下に彼らがどんな目に遭ったか。
ニュースにならないだけで熱帯性カブトムシが逃げ出してミヤマクワガタを駆逐しているであろうことを考えると、事態は更に深刻です。
それに養殖技術の推進で規制解除されたネオケラトドゥス、成長すれば体長は2メートルを超えます。
2千円で買える「世界最大の淡水魚」ピラルクーの稚魚。
スッポンモドキ。星の模様のリクガメ。
駆除されていくテンとウシガエルマングース
沖縄の河川に溢れ返るアマゾンの熱帯魚。
この国には悲しい生き物がたくさんいます。


でもそれじゃあ、マンガやテレビに動物を出しちゃいけないんですか?
かわいい犬のCMやペット自慢番組、ペットエッセイは全面禁止ですか?
違うでしょう?
必要なのは「うちではそんなものは飼えません」と厳しく叱ってくれるお父さんやお母さんなのでは?
駅に猫がいるだけでアイドル扱いされたり魔法少女の隣に見慣れない珍獣ペットが映っているのを見て「ああ、またペットショップで小学生が」と心を痛めるのはぼくだけで十分です。
何とか審議会を結成してどうこうしてほしいとは思いません。
アザラシのタマちゃんもネコ駅長も、うんざりするだけで報道するなとテレビ局に乗り込んだりしません。


「かわいい犬や猫が惨殺されたりひどい目に遭うのは見たくない」
その気持ちはわかります。
2ちゃんねるの「ペット嫌い板」なんて本当にひどいですからね。


でも実際に飼いきれなくなったイヌやネコを川原に捨てたり保健所に連れていくのは、微笑ましいペット番組を見てその気になった人たちです。
一瞬、ほんの一瞬だけ動物愛護の思いを抱いた人です。
その思いが継続しなかった人です。
ぼくは動物愛護という言葉が嫌いです。


趣味でネコの首を切ってわざわざ人に見せる変態と、一般人の皮をかぶった偽善者。
この2つは全然違う問題なんですよ。
動物が可哀相だから政治で何とかしたいと思うなら、保健所のシステムかペットショップのシステムを変えるか、密輸や動物愛護法違反を厳罰化するかの4択、あるいは全部です。
虐待動画とペット番組をまとめてこの世からなくせばどうにかなると言うのは、楽観ですらありません。
まともな人が考えることとも思えません。
――そこには「動物愛護」という万人受けするお題目を掲げた、何かもっと薄汚い裏事情があるのではないかというのは考えすぎでしょうか?


これはあくまでたとえ話ですが、今回の出版規制問題というのはつまりこういうことなんじゃないかとぼくは思います。
汀こるものさんには他の考え方があるようですけど。