カエル、永眠。


本日、我が家のカエル(名前)が永眠いたしました。
体重は45g。
うちに来て1年と3ヶ月になりますが、オタマジャクシだった期間とペットショップにいた期間がどれだけだったかわからないので、正確な享年はわからない。
若いのは確か。
俺はカエルと呼んでいたが姉は「木村カエル」と呼んでいた。


出血があり、コオロギを食べなくなったので慌てて豊中の有名な動物病院に駆け込んだところ、「敗血症」と診断されました。


「かなり難しい状況ですがもしかしたら栄養剤と抗生物質で何とかなるかもしれないので、あまり期待せずに試してみてください」


お医者様は若いお姉さんでしたがカエルの扱いに慣れていて、流石プロ、といったところでした。
それまでに「扱い動物:両生類」とサイトに書いてあるにもかかわらず「うちカエルは診てません」という病院2軒にあたったので、もはや神様に近かった。
問診票に「院長先生を希望しますか」という項目があったが、「カエルが見れる人なら誰でもいいです!」とわらをもすがる思いだった。
……待合の患畜の中で、一番変だったと思う。俺のカエル。
途中、患畜なのか営業担当なのかよくわからないネコが様子を見に来てひやっとするなど。
君は嫌いじゃないけど、ちょっと遠慮してくれないかな。
珍獣専門だけあって本棚にものすごいフクロウの本とか置いてあってそこは楽しかった。


さてこるものさんは動物病院に行くのが初めてだった。


「……カエルが8千円で……一応今財布に3万円弱入ってるけど、これはこれ以上かかるようなら……」
「……妥当なとこなんじゃないかな……」
動物病院にはこういう悩みもあるのが難しい。
結局、5千円で住んだんだけど。
……保険適用されてるはずの俺のヘルペスの薬より安かった……
後、大いなる問題として「移動中の保温」ということがあったが、車の暖房をガンガンかけることで解決。
むしろ暑かった可能性がある。


「経口のシロップですが、テレホンカードのようなものでカエルの口をこじ開けて、スポイトを口に入れて飲ませてください。
点滴の薬剤は……カエルに針は刺せないので、皮膚から吸収させるために薬液に直接浸してください。
24度くらいに温めて、水位はカエルの口が水から出る程度。
1日1時間、1週間やってみましょう」


元気な頃ならそんなことしなくたってカード見せた途端にカエルは食いつくはずなのに。
作業台に載せた時点でびょんびょん跳ねるはずなのに。
お姉さん先生の手際のよさと反比例して、こっちはどんどん悲観的に。


自宅に帰って点滴をした頃には、カエルは死んでいた様子。
変温動物であるカエルは体温で生死がわからず、俺はカエルの心臓の音も呼吸音も聞いたことがない。
硬直したように動かなくなり、皮膚が乾いてきたところから死んだのだと解釈。
箱を開けても生きているのか死んでいるのかわからないシュレディンガーのカエル。
笑えない。


10年ほど熱帯魚を飼ってきたこるものさんだが、生きている餌金を喰ったのはこいつだけでした。
その餌金の最後の1匹が、今俺のそばの水槽に泳いでいる。
諸行無常と言えば簡単すぎる。
たった1年半だったけど、命の循環とは何か、これまで知らなかったことをカエルは教えてくれた。


ちなみに熱帯魚のペットロスはハンパないものがあって、コレクションしていたナマズが伝染病で全滅してしまい、呆然として水槽の中でナマズの死体が朽ちていくのを放置していた人がいるらしい……
後日掃除したら、でかいナマズだったので頭蓋骨がゴロゴロ出てきたそうだ。


告別式は明日、汀家の庭のロウバイの下で行われる予定。
庭があるとこういうときに便利だ。桜じゃないのが軽く残念だけど。
まるまる1缶残ってる缶コオロギも一緒に埋葬するか……
投薬用のスポイドは形見に取っておくとして。
1目盛0.1ml。ものっそい小さい。


……抗生剤の点滴パック、どうしよう。
うち浄化槽だからトイレに抗生物質流したらトイレ壊れちゃうし、屋外にばらまいたら淀川に混入しちゃうし。
燃えないゴミ?


中国では月にはカエルが住んでいると言われている。
野口さんを見かけたらよろしく言っといてね、カエル。