2025年万博辛口レポ

 俺には全くそんな気はなかったのに父がはしゃいでコンビニでチケットを買ってきてしまったので、家族で行くことに。

姉「……この紙のチケットでは入れなくて電子QRコードを発行しなければならないというのに、どこの誰が年寄りにチケットだけ売りつけて?」
俺「会場内電子決済オンリーだぞ。父には現金しか決済手段を持たせてないからロマンス詐欺が来てもPCがどんだけウイルスにやられても取られる金がないという水際作戦、一人で行ったら水しか飲まないで帰ってくる」

 父はあらゆるサブスクを登録しておらず、朝日新聞radikoとBSの時代劇再放送だけで生きている。
 LINEの使い方は3回ほど教えたが現在全く使っていない。
 FMラジオを聞いている間はyoutube陰謀論などに引っかからないという利点がある。
 そもそもFMラジオの喋りが上手いのに慣れてたら素人動画なんか聞いてられないからな!
 それでも新聞広告にノセられて謎の万博記念硬貨セットを買ったりするので手動でキャンセルしている。

 ……本当にどこの悪い商売が万博チケットだけ買わせやがって……

姉「……仕方ない、パビリオンを予約するか……イタリア、8月までいっぱい」
俺「ガンダム、モンハンは無理として、アメリカと中国は夕方の流れで……何か行きたいとこある?」
姉「ヨルダンの砂漠体験と死海の塩のスパマッサージ」
俺「俺にはその興味すらないのでそれを優先だ!」
姉「万博値段のくら寿司最大手らしいぞ」
俺「夢洲まで行ってチェーンの寿司なんか食ってられっか!」
姉「バオバブドリンク飲んでみたいからアフリカンダイニングホールは?」
俺「俺にはその興味すらないのでそれを優先だ! ……ヨルダンの砂漠体験がどうとかってこのミャクミャクアプリのパビリオン紹介には全く書いてないんだがどこで知って?」
姉「本屋で買った万博るるぶと、〝国名+パビリオン〟で1個1個検索」
俺「デジタルとは……?」

 結局、予約が取れたのはオランダパビリオンのみだった。

姉「オランダってハイジの」
俺「それはスイスだ。ハイジってスイス本国ではイマイチで、日本アニメだけ高畑勲がとっくに死んで塾のCMに使われてるから版権使用料が安上がりなのでは……」
姉「オランダはミッフィーコラボ」
俺「フランダースの犬じゃなくてよかった!」

 オタクアニメしか取り柄のない国だな日本!

姉「まず東ゲートか西ゲートを予約する必要があるわけだが」
俺「何で入場予約……これまでの万博レポで西ゲート駐車場を使ってる人が誰もいない。それにうちのカーナビは今は存在しないデイリーヤマザキの表示が出る……夢洲なんか丸ごと知らんぞこいつ。インテックス大阪なら行けるが、自家用車で夢洲に行く自信が全くない」
姉「地下鉄一択だな!」
俺「何か入場時の荷物検査超厳しいらしいからうっかりハサミとかカッターとか持っていかないように家でチェック。
(※同人イベントの名残でカバンに入っててときどき空港で取り上げられる)」
姉「モバイルバッテリーは2個、行列中の暇潰しとしてタブレットは2個持っていくとして……危険物の定義とは?」
俺「何もせんわけにいかんのやろ」

 こうして地下鉄で夢洲を目指す俺たち。

俺「大阪市営地下鉄が山手線みたいな本数来るぞ!? 何が起きているんだ!?」

 普段中央線とか乗らないので大いにビビる。

万博ガンダム

俺「え……ド平日なのに前の人間の頭しか見えないくらい人がいる」

 そしてあんなに飲み物を持ってくるなというアナウンスがあったのに皆、ペットボトルのお茶を持っているのだった。

俺「前のじいさん、張り切って全身ミャクミャクコスなのにペットボトルの飲み物持ってる……」

 手荷物検査に時間がかかる。
 しかもこの待機列が全く整理されていない混沌としか言いようがなく、不安が募る。

 入場すると、日陰の椅子は人でいっぱい。

休憩所

 こういう休憩所が細々あるのだが日陰はぜんっっっっっぶいっぱい。

俺「今日(5月20日火曜日)ってド平日だと思ってたけどもしかしてゴールデンウィークだったのか……?」
姉「気温もそれっぽい……」

 急いでアフリカンダイニングホールPANAF’で昼食。

姉「アニメイトの横のラーメン屋の2階」
俺「わかりづれえー。何で万博にアニメイトがあるんだよ。日本はオタク産業しかないのか」

 座り席はいっぱいなので立ち食い。
 ときどき、太鼓を叩くお姉さんがホールを巡回する。

マフェカレー、サラダ、バオバブドリンク
プロシェットサンド

 マフェカレー、プロシェットチキンサンド、サツマイモのフライドポテト。
 マフェカレーは日本カレーともインドカレーとも違う、あんまり辛くない。
 異国情緒と引き換えに、壮絶な万博値段である。
 なお俺たちはこの前の日にサイゼリヤに行って「散財は万博でするから」とパスタ食って帰ったりしていた。
 本当にサイゼリヤの安さが身に沁みる。

 バオバブドリンクは乳酸菌風で何かサツマイモの後味がある。
 バオバブの実を粉にして溶かしたとかで健康だか美容だかにいいらしい。
 翌日の便通がよかったの、バオバブの効果かもしれない。

 

俺「絶対この後、ソフトクリーム食うのに決まってるから腹八分目で」

 

花壇と雑草の境目

 万博歩いてるとポット植えで整備した花壇部分と自然の雑草が生えるに任せた手抜きゾーンの落差が否応なく目につく。
 ラベンダーはポット植えでアザミは手抜きの雑草。

俺「……ここ、メタンガスが出る埋立地なのに自然な雑草がこの量生えたの?」
姉「自然っていうか……花壇ゾーンと雑草ゾーンの境界がやたらはっきりしてる」

 突貫工事がこういうところに出る。

 ヨルダン館で30分ほど待って砂漠体験。

俺「……コンパニオンのマイクの調子がよくないのか日本語なのに何言ってるのかわかんなかったが……」
姉「シッ」

ヨルダン砂漠体験

 ヨルダンの砂漠から150万トンほど持ってきた砂を20万まで海原雄山のように厳選したものを裸足で歩いてベタ座りで映像を見る。

コンパニオン「砂が乾燥してサラサラしているでしょう!」
俺「俺の身体が汗でベタベタで足指の間に残る」

 死海の塩のスパマッサージは7時まで予約が埋まっていて爆死であった。

俺「じゃ次は……フランスは30分で入れるって」
姉「ちょっと待った、列形成が変で大屋根リングまである……本当に30分で捌けるのか?」

 画像参考:フランス館と大屋根リングの位置関係

 ここで錯乱した俺たち。

 ネタ枠のトルクメニスタンに20分並ぶ。

姉「トルクメニスタン、人気ありすぎじゃないか!? ネタ枠なのに!?」
俺「バズったからだ! ネタ枠をバズらせちゃいけなかったんだ!」
姉「ちょっとまともな国なのかと思い始めてるしな!」

 バズの勢いで来ている人ばっかりなのでどこがどうネタなのか理解していない可能性があった。

姉「……ヨゴレの俺たちはともかく、ネットミームを知らない父をトルクメニスタンに20分も並ばせてはいけなかったんじゃないか……?」
俺「やっぱりちゃんとした国を見よう、フランスに戻ろう」

 フランスパビリオンの行列は一層混沌としていたが20分くらいで入るのは入れた。
 ただし。

俺「フランス人!! 登りを階段で登らせて下りエスカレーターをつけているのはどういうことだ! 逆にしろバカ!! 気遣いがないのか! 映像見せるのに椅子もないのか! バカ!」

 俺はフランスのもの見に来たのに何でアシタカ?
 日本映画じゃねーか。
 何で神社の模型?
 コラボ?
 いろいろと展示は凝っているのに説明文が足りなくてわからない。
 QRコードで出されても困る。
 日本語看板を出せ。
 フランスってルイヴィトンとココシャネルだけの国なのか?
 最近、『翔ぶが如く(原作小説)に不吉の象徴として「フランス香水」という言葉が頻出したので何かウッとなった。

俺「大概ヨレヨレになってまいりました。アイス食べたい」
姉「フランスパビリオンの……レストランだけの列がある。メニューにアイス・ジェラートが出てない」

ソフトクリーム

 結局お好み焼き屋の隣のソフトクリーム食ったが、異様に待たされた。
 ソフトクリーム1時間待ちかと思うほどだった。

 ここでカバンから出てきた去年の塩タブレットを舐め、「自己責任、自己責任」の呪文を唱える。
 塩タブレットとかそんなに傷みそうではないが結構ビジュアルはキツめに変化しており、それでも塩分補給しないよりはマシだろうが家族にはとても勧められないの略。
 その後、去年の日記を読んだら俺は去年も「去年の塩タブレット」を食べる記述があったのでもしかしたら見るからにビジュアルに変化があったのは一昨年の塩タブレットだったからなのかもしれなかった。
(※現在、体調不良はありません)

 姉が自販機を見かけるたびガンガンペットボトルの麦茶を買ってトイレを見るたびトイレに行くので俺はついでに麦茶を100mlくらい飲ませてもらうと足りるという体調事情。
 無料の給水所は混んでるところと空いてるところの落差が激しい。

 その後、もっと安い他のアイス屋を見つけたが、看板はあるのにアイス屋の本体がどこにいるのかわからなかった。

 トイレはたくさんあるのにどこにあるのかわからない。

 あるけどいちいち並ぶ。
 スカスカのジェンダーレストイレの横に女子トイレの長蛇の列がある、これがあらゆる諸悪の根源である。
 女子は何か手洗いの流しでも歯磨きとか別の用事をするのでいちいち全部埋まっている。
 女子トイレに列などなければ誰もジェンダーレストイレの是非など問題にしないのである。
 犯罪はそれ以前の話だ。
 分断に騙されるな。
 いつまでも女子の問題を解決しないシステムが悪いんだ。

姉「一息ついたところで、ミャクミャクが盗難されたと噂のバルトは?」

バルトパビリオン ミャクミャク祭壇

 バルト館はミャクミャクの山だった。
 そして……

俺「これ何待ちの列?」
姉「……何か説明してるけど前の方5人くらいしか聞いてないと思う……ヨルダン館には形ばかりのマイクがあったのにここにはそれもない」
俺「ここのノリ、高校の文化祭の展示っぽくないか……?」

 民族衣装のお姉さん以外、スタッフと客の見分けがつきづらいのが高校の文化祭っぽい。
 というか大学の学祭っぽい。
 それらしい民族衣装を着て腕章でもつけていてくれないとマジでスタッフと客が見分けられない。
 胸からスタッフ証を下げているのは客もそれっぽいものを下げていて微妙……
 民族衣装のお姉さんは頼めば一緒に写真を撮ってくれるがスマホをかまえてシャッターを切ってくれるだけの係の人がいなくて自撮りモードになるので微妙……
 言うけど足利市には山姥切国広のパネルと写真を撮るためにレフ板を持ってくれる係の人までいた。

俺「日が沈んで参りました。立ちっ放し歩きっ放しでか弱い俺の腰が限界です」
姉「パソナでiPS細胞の動く心臓が見たい」
俺「俺たちが氷河期世代ド真ん中で今も就職差別を受けているのは全部人売り企業パソナのせいなのによく見に行く気になるな……?」
姉「それとこれとは話が別なんや」

 1時間待ちだったが俺たちが入る頃には2時間待ちだった。
 夜の方が空いてるなんて誰が言った。

 前の大阪万博の使い回しの生命の樹、取って付けたようなアトムの3Dアニメを見てから人工心臓

俺「シート状で心臓の形してないやつの方がバクバク動いてる! キモ!」
姉「心臓が動いてるのは内部だけなのでは?」
俺「このiPS細胞って誰の、とかあるの? 培養元」
姉「知らん」

 アンモナイトを探せと言われたけどここより百貨店の壁で探した方がテンション上がるんじゃないの?
 ここも立ったままで映像を見せられたので憎悪が募る。

 イタリア館の前を通過。
 フェンシングの実演をやっていた。
 ちょいちょいこういうイベントがあるのな。

 日が暮れると潮風が冷たいので持参の上着を着る。
 荷物を小さくまとめようとしたのにどう足掻いても夜は寒いので長袖の上着が必要な変な気温。

俺「で……オランダ館の予約が7時で今が6時……どっかで晩飯を食わなければ全員が糖尿病の俺たちは最悪、誰かが低血糖で倒れるが」
姉「近大レストラン……ダメだ予約必須で入れもしない。ていうかあのセブンイレブン入場制限の列を見ろよ最大手だぞ」
俺「ラーメン屋まで戻って飯を食って7時にオランダ館に行く自信がない。ここまで来て食うものがないって言うのか……」

 万博値段といっても食事にありつけるだけマシなのだった。
 予約と行列を乗り越えた選ばれし民しか万博グルメにはたどり着けない。

姉「……そこのシンガポール館のカフェだけなら入れるぞ!」
俺「おお! ……入れるけど料理置くテーブル小っさ!」

シンガポール ラクサ
シンガポール チキンライス

 ラクサ(米の麺。海老、カマボコ、油揚げが載ってる)とチキンライス。
 シンガポールという味だったがラクサにカマボコと油揚げ載ってるの日本風アレンジなのか?

シンガポール ロティ・プラタ カスタードまん

 デザート、手前がロティ・プラタ(甘い揚げパン)で奥の丸いのがカスタードまん。
 ロティ・プラタ、味はうまいのだが揚げパンというかパイ皮みたいな生地でボロボロボロボロこぼれて食べにくい。

姉「ギリ晩飯は確保したが小腹が満たされない!」
俺「血糖値は補充されたんだから考えるな! オランダ館を見てからにしろ!」
姉「万博値段でもいいから帰りにうどんが食べたい!」

オランダパビリオン 外観
オランダパビリオン オーブ

 要予約で予約しても待たされるオランダ館。
 一人ずつ光るオーブを持たされ、パビリオン内でチャージしたりされたりする。
 なかなか楽しい。
 館内のドデカい月のオブジェが天井を貫通して外側にも出っ張っているのがオシャレ。

俺「オランダ館……! 天井の映像を見るのに脊椎が伸びるクッションに半寝させてくれる、何て優しい気遣いに満ちているんだ!」

 もう腰にいいかどうかしかパビリオンの採点基準がない。

 そして出口にはミッフィーグッズと軽食コーナー。
 パビリオン見ないと入れないところでワッフル売ってる。

オランダパビリオン ワッフル

 オランダワッフルは日本でメジャーなマネケンとかのソフトタイプと違ってカリッとしたハードタイプ。
 焼き立てはちょい柔らかいのにベタ甘い糸を引くキャラメルペーストを挟んでいただく。
 ココスのモーニングでは食べられない味。
 ちなみにベルギー館にもワッフルはあるがレストランだけで45分待ちだった。

俺「シンガポールで満たされなかった小腹が満たされた! ありがとう万博グルメ、ありがとうオランダワッフル!」

噴水ショー

 もう真っ暗なのでシグネチャーゾーンの噴水でショーをやってるのを大屋根リングから見る。

姉「俺たちの血税でやってんだからちょっとは映えてもらわないとな」
俺「ドローンショーは?」
姉「1時間後」
俺「アッハイ帰りましょう。腰が破滅する前に」
姉「帰り中央線、始発駅なんだから座れるまで待とうな……」

東ゲート ミャクミャク

 東ゲートから地下鉄の駅まで遠い!
 すごい人混みなのをぐるっと一周歩かされる!
 しかも真っ暗!
 そりゃかろうじて家族を見分ける程度の光量はあるが!

俺「……ここを万博の後、何に使うって?」
姉「オフラインカジノ」
俺「オンラインカジノがこんなに問題になってるのに何でオフラインカジノなら大丈夫だという自信が……? 俺たちはそもそも普通のネットゲームとオンラインカジノの見分けもつかんのに怒られだけが大きくなっていく……」
姉「令和ロマン、M-1出るのかな」
俺「むしろまだ出るのかよ」
姉「こうしている間にも大阪市民は図書館サービスが止まって困っているはずだ。市民じゃなくて本当によかった」

 地下鉄に座れるまで待つ作戦は何とか功を奏した。

姉「……まだ小腹が空いてるから帰りに何か食べたいんだけど」
俺「俺はそうでもない。父は?」
父「別に」
姉「……ミャクミャクグッズを買いそびった!」
俺「新大阪や梅田でも売ってるやろ」

 何ならうちからはエキスポシティに行って太陽の塔グッズを買った方が早い。

~翌日~

俺「結局、父は満足したのか?」
姉「さっき東寺に行くって言って最寄り駅まで行って無理だって帰ってきた」
俺「行く前に気づけ」

 iPhoneとスマートバンドで数えたところ、万博で9km歩いていた。

 関西には万博の勢いでやっている国宝展が3つあり、うち1個に行くのでもう2度と万博チケットを買ってこないでほしい。