伊豆配流ツアー 2日目・修善寺編

 伊豆の国市から修善寺へは12km程度、車で20分!
 ヨユーヨユー!
 途中ガソリン入れて行こうな!
 帰り、高速道路に乗るまでのどっかで入れないと、高速サービスエリアの死ぬほど高いガソリン入れる羽目になるからな!

 

 と一念発起して入れたレギュラーガソリン、164円。
 静岡県の最安160円~最高170円の丁度中間。
 てっきり修善寺に近づけば近づくほど高くなると思っていたが、近づくとむしろ安い。
 狐につままれたような気分。
 言うて来週200円台に上がるかもね。
 歴史の1ページとして記録しておく。

 

 しかし修善寺には罠があった。

 

 ネットに書いてある「修善寺オススメの駐車場」がカーナビに表示されないのだ!
 車に固定のナビ、スマホのナビ両方で検索してもダメ!
 ノイズが多すぎて絞れない!
 住所でも出ない!

 

 こちらは伊豆の国市大河ドラマ館のホームページ。
 おわかりいただけるだろうか。
「カーナビ検索電話番号」というものを設定して確実にカーナビで探せるよう手配してある。
「普段、人が来ないところなのでわかりにくいと死ぬ」という自覚が伊豆の国市にはある。

 修善寺は人が来て当然なので努力をしていない!
 ガッデム!
 車で来るような情弱に配慮はない。
 しかも土地勘のない関西人の来訪を修善寺は想定していない。
 俺だってなぜか日光東照宮には1回も行ってないのに2回も久能山東照宮に行くことになって「もう2度と静岡県には行かねえ」とそのたび誓っているのに調子こいて修善寺にまで行くな。

 

 温泉街を通りすぎて山に入ったり、30分くらい格闘した後でやっとそれらしい駐車場に到着。
 死ぬかと思った。
 しかしそこは修善寺としては端っこだった。

 

 今日の目的地である範頼の墓まで115m。いいのか悪いのか。
 範頼の墓は今週6月19日第24回「変わらぬ人」の紀行に絶対出てくるから外したくない。

 

 標識に従って……何かすごいところに連れていかれてないか?

 

 従五位下三河源範頼は頼朝の義経追討の意に従わず、曾我兄弟仇討ちで頼朝死亡の誤報がもたらされたとき政子を「範頼ある限りご安心を」と慰めたことが仇となって生還した頼朝に幕府横領を疑われ、修禅寺に幽閉された上に梶原景時の手勢に攻められて日枝神社で自刃した。
 蒲殿の墓は森の中にひっそりとたたずんでいるのです……
 ここがこんなに注目されるの今年だけやぞ。

 

 ……デジタルスタンプラリーとかやってる。
 看板のQRコードスマホで読んで取得。

 

 ……お、おう……
 公家モンゲットだぜ。
 これいつから始まってどこまで……
 いや考えるのはやめよう。

 

 折角来たんだから範頼墓隣の茶店で何か食べるか……
 昼飯まだだし。
 と思ったのに看板は無常に「本日休業」
 木曜なんかに来るのが悪い。知ってる。

 

 頑張って修善寺のメインストリートを目指す。
 この「範頼墓」、スタンプラリーの最後の難関なのでは。
 土産物屋とか全然ないぞ。

 

 こう! 修善寺ってこう!

 

 こう! 修善寺ってこう!

 

 うろうろしていたら比企能員のスタンプゲット。
 逆に似ないように頑張っている気配が漂う。

 

 それはそうとそろそろ何か食わんと血糖値がヤバい。
 日が射して暑くなってきたし、冷たいもの。
 冷たくて血糖値が上がるもの食べれてトイレ貸してくれるなら何でもいい。

 

「クリーム白玉とクリームあんみつって何が違うんですか」
「あんみつは寒天が入ります」
 白玉は米粉。寒天は海藻。寒天の方が糖尿病にはマシなはず。

 

 宿で朝ご飯多めに食べてきたので昼ご飯はこんなもんで、次はメインの修禅寺
 どうやらこの辺の地名が「修善寺」で寺は「修禅寺」みたいですね。

 

 修禅寺の入口にスタンプラリーの最初のパネルがあって逆に不安になった。
 これまでの蒲殿や比企はカウントされていないのでは。
 いや、これ安達盛長の墓とかあるから無理じゃろ。
 その後調べたら頼朝や義時は駅前にいて、最難関は奥の院義経だった。
 無理だってば。

 

 修禅寺で初めて、「御朱印渋滞」に出会う。
 ここまでの伊豆の国市の寺では既に書いてある御朱印を買っていて、新たに御朱印帳に書き込んでくれるのは修禅寺が初めてだったのだ!
 ……普段から人が来るところならではの余裕……

 

 宝物殿の入場券をお守り授与所で買う。
 ……お守り授与所に北条政子の母子守りあるのはブラックジョークか?
 どういう気持ちで売ってるの?
 死因宝具?

 

 宝物殿は岡本綺堂修禅寺物語』激推しだった。
 帰ってから青空文庫で読むことにする。
 って短めの戯曲だったからここでスマホで読んでもよかった。
 激推しのわりに「『修禅寺物語』は頼家以外全員岡本綺堂オリキャラですよ」という謎の断り文句が書いてあった。
 まあフィクションと史実は分けるべきであるが。
 そんでここも北条早雲で新九郎聖地だった。
 本当にこの辺で活躍してたんすね。
 公暁の写経とかあった。まだギリ文字が読めた。

 

 さて、寺に行ったら最後の難関は万寿もとい頼家の墓と指月殿だ。
 二代目鎌倉殿頼家は、頼朝以上のスケベ殿、二代目性の大将軍で部下の妻をNTRなど人望がなくちょっと寝込んだのをいいことにクビにされて三代目実朝が立つことに。


 その後、頼家は修禅寺に監禁されて北条家の陰謀で漆入りの風呂に入れられるなどしてものすごい不治の病であるように演出され、ガチャ爆死と見なされロックを外され刀解に回されくべられることとなった。
 それだけでは飽き足らず筥湯で入浴中に襲撃を受けて暗殺される。
 落ち目のときの入浴は源氏の死亡フラグだった。
 その後、いろいろあって政子が暗殺された我が子を悼んで建てたのが指月殿である。

 

 わりと政子はどんな気持ちなのそれという感じだ。
 看板などでは全くフォローはなく、スタンプラリーはしっかりある。

 

 そこにあったのはスタンプラリーだけではない……

 

 政子の母の愛を伝える拈華微笑の絵馬の自販機……
 そ、それ自販機で売るの!?
 ここ、寺の本体と離れてるから!?
 母の愛、あるんか!?
 1つ1つ手でやるばかりが愛ではない、真心ではない、だろうが……
 語らずとも察するってそれは昔は美徳だったんだろうけどなあ!
 政子、政子ー!

 

 頼家の墓は何も言わない。そこにたたずむのみである。

 

 ただデジタルスタンプラリーの情報を現代に残して……

 

 頼家の死から6日後に謀叛を企てたとされ討ち取られた十三士の墓。
 彼らは名前すらわかっていないので、スタンプラリーもなかった。

 

 こうして俺の修善寺巡りは終わった。

 

 何でこんなところで義経の像見やなあかんねん。
 いや、ないと納得しない人もいるのはわからなくもないけどさあ。
 おしゃぶりばあさんの像って何?
 謎のモヤモヤを残して……

 

 まあお土産屋をちょろっと見て、温泉なんだから炭酸煎餅の1つも買わなきゃな。

 

 来た道を戻りながらお土産を物色する俺に、押しつけられる試供品の饅頭、丸々一個。

「どうぞお試しくださいーお茶も飲んでくださいー」

 ……饅頭1個丸ごともらうと流石に罪悪感がすごい……
 その後も試供品を山ほどくれる。
 しかも俺以外に客がいない。

「……クッキーください」

 こうして俺は何かに負けて特にほしくもない麦こがしクッキーを買って帰ることになった。

 

 今日はこんなに歩き回ったんだからすごい距離なんだろう!

 

 ……そう。

 

 さて、修善寺から大阪まで5時間。

 

「料金200円です。ETC使えないから現金で」×2

 

 今どき、通行料200円を小銭で取る謎の有料道路を2回走らせられる。

 

「三島から沼津までは下道通った方が速いすよ」
「それは本当にそうなの!?」

 

 超長距離を走ると途中に意味のないUターンを2回挟んで「これでさっきの予定より2分早まりました」とか言い出すクセの強いカーナビ〝シンギュラリティ〟(愛称)との戦いが始まった。
 このカーナビ、電話回線ではない謎のネットワークで天気予報や道路工事、渋滞情報を収集する、俺の使ってきた中では一番頭がいいが、とにかくクセが強い。
 新東名高速の愛知県から滋賀県、湯の山~新亀山ジャンクション辺りのデータを持っておらず、自分で新東名を走れと言いながらいざその辺に差しかかると俺が走っている道路を見失い、下道で検索し直しては必死に「右折して」「左折して」と高速道路では無意味な指示を出すので無視するのが大変。
 新東名を知らないのにいざその場に至るまでは知っているつもりでルート計算をするのも意味がわからない。
 新東名が開通したのが2012年って謎ネットワークにつながっているのに何でデータが更新されないんだ?

 

 それで必死で大阪まで帰ってきたら高速を降りるところを間違えて大阪府内で豪快に迷った。