五位鷺発売日です

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「お前は木乃伊に、わたしは九相図になるわ!
 それが御仏の教えよ!
 火事と喧嘩は都の華よ、憶えておおき」
 化野の露、鳥辺野の煙、メメント・モリ
 平均寿命、四十歳。
 血も涙もファンタジー設定もない中世暗黒平安京を信仰と夢と魔法で生き延びろ!

 

 早ければ今日から店頭に並んでいるはず。
 ……この表紙につけるキャッチコピーがそれ?
 てかそれ、逆ハーラブコメ
 ラブコメです(断言) 皆、預流ちゃん大好きだよ。
 ラブコメと同時進行で闇討ち、暗殺、白熱の魔法戦、三つ巴の属性バトルをお楽しみください。
 ……ファンタジー設定ないんだよね?
 代わりに奇跡も魔法もあるんだよ!
(嫌な予感しかしない)

 

 そもそもこの企画、どういう打ち合わせで出てきたかというと。

「この辺で女子向けライト文芸やりましょう。世情的には異世界ファンタジーまだまだいけるけどどうですか」
「俺はミステリに踏み込む前はロードス・スレイヤーズ路線だったので楽勝です。転生系ですか、現地系ですか」
「最近は現地ですねー」

 

 と言うのでプロットを一本送ってみたが。

 

「対象年齢が低いです。もうちょっと大人の女性向けに」
「え、俺が書いたら高くなるから大丈夫ですよ……」
「そういうわけには。あやかしカフェのほっこり事件簿は?」
「れべきゅーに全力投球してるうちは妖怪物は無理です」
「ペット」
「俺が犬だの猫だの恒温動物の話を書いたら「裏切られた!」と思う人がいるのでは……?」

 

「あれはイヤこれはイヤ……じゃあこうなったらいっそ、オリエンタルファンタジーはどうでしょうか。古代中国の後宮がどうとか精◯の守り人とかです」
「俺が大学で古代中国専攻だったことなら忘れてください! ……平安時代なら心得があります、氷室冴子先生読みまくって『マンガで読む古典』見てたから」
「それだ! 平安逆ハーラブコメ! ヒロイン一人称視点で!」
「でも平安時代の姫って外出ないんですけど、どうやってヒロイン一人称視点で逆ハーするんですか」
「それなんですよねー」
氷室冴子先生、頑張ってたよなー……」
「本当に」

 

「……いっそ最初っからヒロインが出家してたらどうですか、平安時代の尼は現代人から見ればフツーに髪が長いです。十二歳で結婚して一瞬で死んだ夫の菩提を弔いましょう。それなら二十歳過ぎてもぐだぐだできて大人の女性向けヒロインやれます。処女の未亡人、皆大好き。平安の結婚適齢期は十代前半なのにやっぱそそられる美人は二十代前半みたいっすよ」
「それだ!」
「でも表紙イラストの大部分を黒ロンと墨染が占めるとデザイン重くてきっついから衣装だけでも密教系の法衣で派手派手にしていきましょう」
「それだ!」
「俺のジャパネスクの推しは吉野の君なので、メイン攻略キャラに坊主を入れてことあるごとに真面目にやれと怒りに来るということにしましょう。平安時代結婚適齢期は12〜14歳で恋と言えばセックスのことで恋愛で悩むのは最後までやった後と相場が決まっていますが、尼と坊主ならくっつきそうでいつまでもくっつかずにぐだぐだしてても仕方ないしうっかりコクってしまったときに難聴のフリしなくても「御仏の慈悲で聞かなかったことにしてやる」とか言えます、宗教だから。平安時代の仏僧がそんなに一生不犯だったかっていうとそうでもないけど個人のこだわりということで。こないだれべきゅーで使った仏教資料使い回しましょう」
「それだ!」
「……え、本当にそんなの書くの?」
「サクッと資料なしで書ける範囲でオナシャス!」
「資料なしで書けるわけねーよ」

 

 しかしある意味で「資料なしで」というのは正しかった。
 いくら集めてもきりがないから。
 全部の隙を潰すとか無理だから。

 

「後、逆ハーだからタラシ中将とシスコンの兄と男装女子と、ショタもほしいけど尺的にキツいからこれは保留として……一人、普通の人入れときましょうか。氷室冴子先生全盛期の頃は陰陽師、王朝文学のモブ枠で影も形もなかったので陰陽師を一人」
「タラシはともかく普通の人、いりますか?」
「いりますよTHANATOSの高槻とさらまんどらの先生は普通の人枠なんだから(くわっ)」

 

 結果として全然普通の人になっていない講談社陰陽師が出現した(※KADOKAWAです)

 

 こうしてこるもの先生の暑い夏が始まり、何かあるたび源氏物語平家物語を交互に読み、41歳でうまいか下手か全くわからないが古文調の和歌が書けるようになった。
 人間、何でもやればできるもんだ。

 

「というわけで本文はできましたが……タイトルが思いつきません! 俺の感覚じゃこれは『尼御前さま、オーバーキル!!!!』ですが女性向け対象年齢層高めじゃそれはダメなんですよね!」
「表紙と帯で詐欺っていくのでタイトルも詐欺ってください。友風子先生のスケジュール押さえましたから画風に合う感じで」
「な、何て柔らかいタッチ! とても俺の本の表紙を描くとは思えない! 俺はともかくこれは友風子先生のキャリアに傷がつくのでは!? あの内容にこの表紙を!? いずれ叡山の奥の院で菩薩になる男と九相図の女と講談社陰陽師ですよ!?」
「この雰囲気に合わせて何かふわっとして平安恋愛ものだとわかる長い感じのタイトルお願いします」
「うう、タイトルに仏教用語入るといかつくなるよな……ええと、この人、一見悪口に見えないというか何言われてるのかわからない〝五位鷺〟というあだ名があるのですが」
「じゃ五位鷺の姫君」
「もう出家して9年になるのに姫も何も」
「後は、ええと、『平安ロマンチカ』ってつけとくとして……『モテてモテて困っちゃう』って平安語で言え」
「!?」
「仕事です!」
「……も、モテてモテて困っちゃう……(涙目)」

 

 こるもの先生は大人の階段を昇りました。

 

 別に頼まれてないけど番外編SSは今夜零時にアップ!
 毎週金曜全6~7回、毎回完結のオムニバス型!

kakuyomu.jp

www.pixiv.net

 第一夜は『ペンは剣よりフリースタイル』8000字!

 カクヨムとpixivで内容は同じです。

 タイトルからして真面目に読むものではない!
 本編まだ読めてない人も気楽にどうぞ!